当院で実施している舌下免疫療法についてご紹介いたします。

日本の花粉症人口は増え続けていると言われ、有病率は10-20%とされています。 スギが最も多いのですが、ヒノキ、ブタクサ、シラカンバ、ハンノキ、など多種にわたるため、春先だけでなく1年中、鼻炎や結膜炎でお困りの方もいらっしゃると思います。
また、ハウスダストやダニにアレルギーをお持ちの方も増えており、アレルギー体質の方は複数のアレルゲンに反応することも多く見られます。
抗アレルギー薬(いわゆるアレルギーの内服薬)や点眼薬や点鼻薬などを上手く使い症状を抑えることが第一歩ですが、
それだけでは改善しない方や、根本的にアレルギー体質を改善させたいとお考えの方にお勧めする治療が、今回ご紹介する舌下免疫療法です。

【目次】
1. 舌下免疫療法の効果
2. 期待できる効果
3. 主な副作用
4. 治療の流れ
5. 治療薬について
6. 治療費用

1. 花粉症の根本的治療
舌下免疫療法は、アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から投与することで体をアレルゲンに慣らし、根本的な体質改善を目的とする治療法です。 唯一の”根本的治療”といえます。(その他の治療はすべて症状を抑えておく”対症療法”です。)
【アレルゲン免疫療法】
◎皮下免疫療法:アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する 
◎舌下免疫療法:アレルゲンを含む治療薬を舌の下に保持する 
近年では安全性の高い「舌下免疫療法」が登場し、注射に代わって広く行われるようになりました。
現在、日本ではスギ花粉症とダニアレルギーに対しこの治療を受けることが可能(2014年10月から保険適応)
※この治療を受けるには、原因となるアレルゲンを特定する検査(当院では採血検査)が必要です。 (他院で既にアレルギー検査を受けている方は検査データを持参してください。5年以内のデータが必要となります。)
※スギ花粉症に関しましてはスギ花粉が飛散する時期(1月から5月)に新規で投与を開始することはできませんのでご注意ください。



2. 期待できる効果
①長期にわたり症状を抑える効果
②アレルギー治療薬の減量(症状が完全におさえられない場合でも、症状が緩和されアレルギー薬を減らすことができます)
③くしゃみ・鼻水・鼻づまり、目のかゆみ・涙目の改善に効果があります。 ※全体の70~80%の人に有効と報告されています。
■注意点 長期間(3-4年間)、毎日治療を継続しなければなりません。継続して治療できない場合は効果がないばかりか、副作用が出るだけで終わってしまうことがあります。
 また、3年未満でやめてしまうと効果は期待できません。 薬の処方のため、原則1か月(30日)に一度受診する必要があります。保険で処方できるのは30日までと推奨されています。
 ごく稀にアナフィラキシーなどの副作用がおこる可能性があります。



3. 主な副作用
◎口内炎や舌の下の腫れ・口の中の腫れなど、咽頭・喉頭(のど)のかゆみ、皮膚のかゆみ・頭痛・アナフィラキシー



4. 治療の流れ
舌下免疫療法を検討されている方は、お電話でご相談いただくか受付でお声がけください。
初回受診日は、下記の方法で舌下免疫療法の対象となるかを判定いたします。
【問診、鼻内所見】
スギ花粉症・ダニアレルギー症の診断と他のアレルギー反応(ハウスダスト・カビ類など)の合併の有無の判定を採血にて行います。
結果が出るまで3-4日間かかります。(採血検査をする場合は3割負担で初診料とあわせて5000円程度になります。
他院で既にアレルギー検査を受けている方は検査データを持参してください。5年以内のものが必要となります。)
治療対象者には治療開始となります。
予約はお電話でお願いします。
舌下免疫療法は講習受講医師しか処方できないためその医師が対応できる日時でご案内いたします。

「スギ花粉減感作療法薬」または「ダニアレルギー症花粉減感作療法薬」の処方
◎スギ花粉減感作療法薬:シダトレン、シダキュア
◎ダニアレルギー減感作療法薬:ミティキュア
・処方薬を受け取られた後に院内で実際に舌下に投薬します。投薬後30分は院内で安静にされてから帰宅して頂きます。
※初回投与日は診察開始から終了まで45分ほど(待ち時間は除く)かかります。
※治療開始時期について
・スギ花粉症:飛散時期(1月~5月)は症状や副作用が強く出る可能性があるため新規での治療開始ができず、花粉が飛散していない時期に開始しなければなりません。 5月末頃から開始できます。
・ダニアレルギー:季節問わず、いつでも開始可能です。


5. 治療薬について
◎スギ花粉症 ジダトレン
 1日1回少量から服用をはじめ、2週間は徐々に増量します。 初めての服用は、スギ花粉が飛散していない時期に、医師の監督のもと行います。
 増量終了後(15日以降)は1日1回同じ量の薬剤を舌下に投与して頂きます。
 これを3~5年継続して頂きます。受診は1か月に1回必要となります。
 ≫ 詳しくはこちらをご確認下さい。 https://www.torii-alg.jp/patienty/intro.html
◎スギ花粉症 ジダキュア
 1日1回最初の1週間は2,000JAU錠を2週目以降は5,000JAU錠を服用します。 初めての服用はスギ花粉が飛散していない時期に医師の監督のもとで行います。
 増量終了後は1日1回同じ量の薬剤を舌下に投与して頂きます。
 これを3~5年継続して頂きます。受診は1か月に1回必要となります。
 ≫ 詳しくはこちらをご確認下さい。https://www.torii-alg.jp/cdq/intro.html
◎ダニアレルギー ミティキュア
 最初の1週間は3,300JAU錠を、2週目以降は10,000JAU錠を1日1回1錠、長期間にわたり継続して服用します。
 増量終了後は1日1回同じ量の薬剤を舌下に投与して頂きます。
 これを3~5年継続して頂きます。受診は1か月に1回必要となります。
 ≫ 詳しくはこちらをご確認下さい。https://www.torii-alg.jp/miti/intro.html

6. 治療費用
アレルギー検査が必要な方は初回に約5000円程度かかります(保険3割負担の場合)。
他院での検査結果をお持ちの場合には検査費用がかかりませんのでその分だけお安くなります。
2回目以降は医院での診察費と薬局でのお薬代で1か月3000円ほどとなります(保険3割負担の場合)。
保険での処方は原則的に30日までと決められていますので、1か月毎に3-4年間の受診が必要になります。

監修:
菰池 信彦

専門分野:
内科・消化器内科・肝臓内科・便秘外来・内視鏡検査


資格:
医学博士(東京慈恵会医科大学)
日本内科学会 認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化管学会 指導医
日本肝臓学会 専門医
日本ヘリコバクターピロリ学会 感染症認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
厚生労働省緩和ケア研修修了