うがい薬の効果は?感染症予防になる?

こんにちは。
昨日は大阪府知事の会見でうがい薬に関する発言がありました。
そこで、今回はうがい薬についてお話します。

 

そもそも、滅菌、消毒、除菌、殺菌、抗菌の違いは?

滅菌・・・全ての微生物を対象として、それら全てを殺戮または除去する方法
消毒・・・対象の微生物の数を減らす方法、感染症を引き起こさない水準までに減少させること
除菌・・・菌を減らす効果のこと(手洗いも除菌の1つです)
殺菌・・・菌やウイルスを殺すこと(明確な定義はなく、9割残っていても1割殺せば殺菌と言えてしまう)
抗菌・・・菌の繁殖を抑える効果で、菌を除去したり殺したりする効果はなく菌が付きにくい環境を作るだけ

薬事法上、医薬品、医薬部外品にしか殺菌、消毒という言葉はつかえません。

 

消毒の種類にはどんなものがある?

大きく分けて科学的方法と物理的方法があります。

1)科学的方法
  ①薬液消毒
  主な消毒薬の一覧(消毒液の空中噴霧は効果が少なく人体に有害なため、WHOは推奨していません。)

消毒薬

対象

効果

短所

グルタラール

細菌・ウイルス全般

刺激が強く内視鏡の消毒など医療現場で使用されている。

 

人体に刺激が強いため扱いに注意が必要

次亜塩素酸ナトリウム

細菌・ウイルス全般

酸化作用でウイルスを破壊し無毒化できるため、テーブルなどに使用できる。市販の家庭用漂白剤を薄めて(2リットルの水に1ccの漂白剤)拭き、その後水拭する。

皮膚や粘膜には刺激が強く手指消毒厳禁、また吸い込むことも有害。金属製品は腐食の恐れがある。

消毒用エタノール

(70%以上95%以下)

一部*を除く細菌・ウイルス全般

手指消毒、環境の消毒全般に使える。

アルコールの過敏症の方は使用できない。引火性があるため注意。

ポビドンヨード

一部を除く細菌・ウイルス全般

手指消毒、粘膜に使用できる。

ヨードの色素がつく

両性界面活性剤

(市販の洗剤)

一部を除く細菌・ウイルス全般

ウイルスの膜を壊すことで無毒化する。新型コロナウイルスに関して厚労省が認めている製剤は9種類あり、身近で購入が可。

 

次亜塩素酸水

一部を除く細菌・ウイルス全般

色々な種類が市販されているが、一部は新型コロナウイルスを無毒化するものがある。

保存状態次第では有効性が保てない。種類が多く効果があるものをみつけにくい。

   *厚労省ホームページより
   *芽胞を持つ細菌(食中毒を起こすような細菌)
  ②気体(酸化エチレンガス・過酸化水素・オゾン)

2)物理的方法
  ①熱 高熱(火炎滅菌)
    温熱(80度の熱水に10分さらすと新型コロナウイルスは死滅することが分かっています)
  ②照射 放射線(γ線滅菌、X線滅菌、電子線滅菌)
  ③紫外線 (UV照射)
  ④濾過

様々な消毒方法がありますが、普段の生活で必要な感染対策はどのようなものでしょうか?

 

手洗いとアルコール消毒はどちらが良い?

手についたウイルスは、流水による15秒の手洗いで100分の1に、石鹸やハンドソープで10秒もみ洗いし流水で15秒すすぐと1万分の1に減らすといわれています。
しっかり手洗いができれば、さらに消毒薬を使用する必要はありません。
手洗いができない状況ではアルコール消毒も有効です。

 

うがいで風邪予防はできるの?

菌やウイルスは体に侵入する際にまず口や鼻の粘膜に付着するため、うがいをすることで菌やウイルスを外へ流すことができます。
また、のどが乾燥していると元からある防衛機能(繊毛がウイルス、菌、ほこりなどの異物を外に出す)が低下してしまうため、うがいでのどの粘膜を潤すことも大切です。
ですが、まだ体に侵入していない菌やウイルスのみにしか効かないので、相当な頻度でうがいをすることが必要になってきます。

 

うがい薬は効果があるの?

過去に、ポビドンヨードを含むうがい薬と水道水によるうがいについての研究がありました。
全国から387名のボランティアを募り、くじ引きで
①水でうがいをする
②ヨード液でうがいをする
③うがいをしない
の3群に分け、2か月にわたって風邪の予防効果について検証したのです。
その結果、発症率が ①17.0% ②23.6% ③26.4% となりました。(京都大学健康科学センター

この研究からもうがいによる感染予防の効果があることが分かりますが、うがい薬では効果がないことが示されています。
ヨード液には粘膜の殺菌、消毒の効果がありますが、口腔内の常在細菌叢を殺してしまったり、正常な粘膜細胞を傷つけてしまったりしたことなどが考えられます。

 

正しい知識をもって効果的な手洗い、うがいをすることが感染予防の第一歩ですね。

監修:
菰池 信彦

専門分野:
内科・消化器内科・肝臓内科・便秘外来・内視鏡検査


資格:
医学博士(東京慈恵会医科大学)
日本内科学会 認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化管学会 指導医
日本肝臓学会 専門医
日本ヘリコバクターピロリ学会 感染症認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
厚生労働省緩和ケア研修修了