熱中症の予防策、応急処置、注意点などを解説

こんにちは。
連日暑い日が続きますね。今回は熱中症についてお話します。

熱中症とは?

 気温が高い環境にいることで、体温を調節する機能が狂ったり体内の水分や塩分のバランスが崩れたりすることで起こる、めまいや頭痛、意識障害などのことを言います。

熱中症はどのようなときになるの?

 運動をすると体の中で熱が生まれます。ただし人間の体には体温調節機能があります。体温が上がると自律神経の働きによって末梢の血管が拡張し、皮膚表面に多くの血液が流れ込むことで熱を体の外に放出します。それと同時に汗をかき、汗が蒸発する時に体の表面から熱を奪うことで、上がった体温を下げようと働きます。
 しかし暑すぎる環境などで体温調節機能が乱れて熱を放出できなくなると、体内に熱がこもって体温が上昇してしまいます。また、急激に大量の汗をかいたときにも、体内の水分と塩分が失われバランスが崩れてしまいます。それによって様々な臓器に影響を及ぼし、熱中症の症状が現れるのです。

熱中症にかかりやす人、なりやすい人はどんな人?

 運動習慣がない人、体調がよくない人、暑さに慣れていない人などです。高齢者や乳幼児は、体温調節機能の衰えや未熟さによって体内に熱がこもりやすくなり、その上暑さを自覚しにくいためリスクが高くなります。また、子供は大人より身長が低いため地面に近く、アスファルトなどの照り返しによる熱の影響も受けやすいので注意が必要です。
 室内での熱中症も問題となっています。エアコンが苦手な方も多いのですが、熱中症のリスクの要素は気温だけでなく湿度も重要です。暑さ指数(WBGT)というアメリカで提案された指数が、28℃を超えると熱中症患者さんが増加します。環境省のホームページ(https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php)でも毎日発表されていますが、WBGT計も販売されているので、数値を目安にエアコンを調節すると分かりやすいかもしれません。

熱中症の予防策は?

1、暑さを避ける
   日陰を歩く
   炎天下での外出を避け、朝や夕方など涼しい時間を選ぶ
   日傘や帽子をかぶる
   窓のすだれやカーテン、日射遮断フィルム等を利用し、室内に直射日光を入れない
   エアコンと扇風機を使用する
2、服装について
   肌着は吸収性の良いもの(吸汗・速乾素材)
   熱を吸収する黒色を避ける
   襟元をあけて風通しを良くする
3、その他
   のどが渇く前に水分補給をする(1日1.5リットルを目安に回数を分けて補給)
   塩分を摂る(スポーツドリンク等を飲む場合、糖分の摂りすぎに注意)
   睡眠と栄養をしっかりとる(梅干、みそ汁などで塩分も取りやすい)

大量の発汗、めまい、しびれ、こむら返りなどの初期症状が出たらすぐに涼しい場所へ避難して体を冷やし、水分、塩分をとりましょう。
改善せず、倦怠感、吐気、嘔吐、頭痛等の症状が続くようなら早めに受診することをお勧めします。

熱中症で倒れた人がいたらどうすれば?~応急処置の方法~

①熱中症を疑う症状があるか ある→②
②意識があるか確認する ない→救急車を呼ぶ→③
            ある→③
③涼しい場所へ移動し、服をゆるめ、体を冷やす(濡れタオルなどで覆い、風を送る)
④水分を自力で摂取できるか確認する できない→医療機関へ(無理に水を飲ませない!) 
                  できる→水分、塩分を補給
⑤症状が良くならなかった場合は医療機関へ

熱中症の際は水の飲みすぎに注意!

 水を大量に飲みすぎると、体内での塩分濃度が低くなり、水分が濃度の薄いところから濃いところへ移る浸透圧の変化で、細胞の外から中に水分が移動して膨らみ、様々な症状が出る低ナトリウム血症が起きます。もともと精神疾患の症状や抗利尿ホルモンの異常などで発症することで知られていました。症状は疲労感、手足のしびれ、頭痛、食欲不振、吐き気などです。そしてさらに進むと、けいれんや意識消失から死に至ることもあります。
 低ナトリウム血症になった時は、熱中症と違い、飲水制限と塩分摂取が必要となります。医療機関で血液検査をすればすぐに分かりますが、異常を感じたら早めに受診をしましょう。
 その他、アルコールやカフェインの摂取にも注意が必要です。利尿作用があるため水分が失われます。
 尿の色を観察することを習慣化し、濃い尿の時、薄い尿の時を水分摂取の目安にすると良いでしょう。

特に今年は・・・マスクをしているときも要注意!

マスクを着け続けると、呼吸がしづらくなるため熱を放出できなくなります。
冷感スプレーを使うと楽にはなりますが、体感温度が変わるだけで暑さによる体の負担を軽減できるわけではありません。体温を下げるには、手首や首などの太い血管が通る部位に凍らせたタオルをあてたり、マスクの中の汗を拭いたりすることが有効です。(マスクの中以外は、汗を拭いてしまうと体温を下げる機能が働かなくなってしまうので逆効果です) 十分に人との距離が保てる場所ではマスクははずしましょう。

 

いかがでしたでしょうか。正しい知識を身に着け、しっかりと対策をし、暑い夏を乗り切っていきましょう。

監修:
菰池 信彦

専門分野:
内科・消化器内科・肝臓内科・便秘外来・内視鏡検査


資格:
医学博士(東京慈恵会医科大学)
日本内科学会 認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化管学会 指導医
日本肝臓学会 専門医
日本ヘリコバクターピロリ学会 感染症認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
厚生労働省緩和ケア研修修了