潰瘍性大腸炎とは?合併症は?検査や診断方法なども解説!

先週からニュースになることの多い潰瘍性大腸炎という病気ですが、実は、院長の菰池が大学病院勤務医時代に専門としている疾患の一つでした。
また現在でも多くの患者さんを主治医として担当しておりますので、簡単に解説をしたいと思います。

①潰瘍性大腸炎とは

大腸の粘膜に炎症が起きてびらんや潰瘍が生じる慢性の炎症性腸疾患です。原因がわかっていないことや、根治に至る治療法がないことから厚生労働省から難病に指定されています。難病ではありますが、適切な治療を受けて上手に症状をコントロールできれは、健康な時とあまり変わらない(「寛解状態」と呼びます)日常生活を送ることもできます。男女ともに幅広い年齢層で発症しますが、特に若い世代に多くみられます。

大腸に炎症を起こす病気は炎症性腸疾患と呼ばれており、特異的炎症性腸疾患と非特異的炎症性腸疾患に分けられます。特異的炎症性腸疾患は、炎症の原因が細菌や薬剤などはっきりわかっているものです。この場合は、原因を取り除く治療を行います。一方、非特異的炎症性腸疾患は炎症の原因がわからない疾患で、潰瘍性大腸炎やクローン病がここに含まれます。潰瘍性大腸炎は炎症が大腸だけに起こりますが、クローン病では消化管のその位置にも炎症が起こるという違いがあります。

炎症では腫れや痛み、発熱と行った症状が起こりますが、これは、体内に入った異物を追い出そうとする免疫系の防御システムが活動して起こっています。炎症は異物から体を守るための不可欠な反応ですが、過剰に働くと体を傷つけてしまいます。潰瘍性大腸炎の原因は正確には分かっていませんが、過剰な免疫反応が関係していると考えられており、TNF-αという体内物質が過剰に作り出され、それが炎症を引き起こしていることはわかっています。現在の研究では原因は1つではなく、遺伝や食べ物、薬の服用、免疫異常などが複合的に重なりあって発症すると考えられています。

②潰瘍性大腸炎の主な症状

下痢や血便、さらに腹痛がともなう場合あり、重症化すると発熱や貧血、体重減少といった全身症状が現れます。
慢性疾患ですが、症状が落ち着いている寛解と、悪化している再燃を繰り返します。そのため、できるだけ長く寛解状態を保つ治療が重要になります。
また、発病してから長期経過すると大腸がんの発症リスクが高まることがわかっているため、定期的な内視鏡検査が不可欠です。なお、直腸炎型の発がんリスクについては一般と変わらないとされています。

③潰瘍性大腸炎の合併症

激しい炎症が続く、あるいは腸管壁の深くまで炎症が進行した場合、腸に現れる腸管合併症や、腸以外の全身に腸管外合併症が起こる可能性があります。
大量出血や狭窄、穿孔、巨大結腸症などの合併症が起こった場合、ほとんどは緊急な手術が必要になります。巨大結腸症は、腸内にガスなどが溜まって膨張し、中毒症状が現れる合併症です。
合併症が腸管以外に現れたものでは、関節や皮膚、眼に病変が現れたり、口内炎や肝胆道系障害、結節性紅斑などが起こる場合もあります。

④潰瘍性大腸炎の検査や診断の方法

診断の際には、血液検査、レントゲン検査、などの基本的検査の他に、内視鏡検査、病理組織検査、などを行います。
下部消化管内視鏡検査では、潰瘍性大腸炎特有のびらんや潰瘍が大腸を確認できます。病変が認められるのは、ほとんどの場合、粘膜層から粘膜下層にかけての表層です。

⑤潰瘍性大腸炎の治療方法

潰瘍性大腸炎の治療では、基本的に薬物療法を用います。
症状がある時には、症状を鎮めて寛解に導き、できるだけ長く寛解期を保つ治療を行います。腸の炎症を抑えるために、5-ASA製剤が基本薬となりますが、炎症の程度により、ステロイドが用いられることもあります。また、免疫を抑制する免疫調節薬や、抗TNF-α抗体である生物学的製剤、抗菌薬などを使う場合もあります。

・5-ASA製剤(メサラジン、サラゾスルファピリジン、など)
腸の炎症を鎮めるもので、寛解維持のために長期的に使われる場合もあります。経口薬、坐剤、注腸剤があり、症状などによって使い分けます。メサラジンは小腸と大腸の炎症にも効果があり、サラゾスルファピリジンは主に大腸の炎症を抑えます。

・副腎皮質ホルモン(ブレドニゾロン、など)
強力な炎症抑制作用を持っているステロイドです。炎症が悪化している時に用いられ、比較的早期に寛解を導入する効果が期待できます。経口薬、坐剤、注腸剤があり、症状などによって使い分けます。副作用もあるため十分に注意をして使用します。

・免疫調整薬(アザチオプリン、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、タクロリムス、など)
潰瘍性大腸炎の一因として過剰な免疫反応が関係していると考えられており、その免疫反応を抑制する薬剤です。症状が悪化している時に寛解へと導く効果が期待できます。また、アザチオプリンや6-メルカプトプリンでは寛解の維持や、ステロイドの使用量を減らすためにも用いられます。

・抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、など)
潰瘍性大腸炎は、TNF-αという体内物質が過剰に作られ、それにより炎症が起きていることがわかっており、そのTNF-αの働きを抑える薬です。

⑥日常ケア

潰瘍性大腸炎は、寛解期には、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができますので、お仕事や学業に特に制限はありません。
実際に、プロ野球やプロサッカーでもこの疾患をもちながら活躍されている選手もいらしゃいますし、芸能関係などご活躍の方もいらっしゃいます。

・運動
過度な運動は避けるべきですが、適度な運動でしたら可能ですし、疲れない程度の運動がよい効果をもたらすという報告もされています。

・食事
寛解期には食事制限の必要はありません。おいしく楽しめる食事を心がけ、暴飲暴食は避けて適量をとるようにしてください。

・アルコール
潰瘍性大腸炎にアルコールが及ぼす影響はまだよくわかっていませんが、寛解期には適量の飲酒をしても問題ないと考えられています。

・妊娠・出産
潰瘍性大腸炎の患者さんで妊娠や出産をご経験された方はたくさんいらっしゃいます。寛解期には経過が良好なケースが多いため、再燃させないように治療を継続的に受けることが重要です。
妊娠中の薬物治療では、基本的に胎児への影響を考慮し、その上で潰瘍性大腸炎の悪化を防ぐ十分な治療を行います。妊娠が判明して自己判断で薬の服用を中止することはとても危険ですから、主治医に相談しながら、コントロールしていきましょう。

 

当院では診断から検査や治療まで専門医が対応できますので、お問い合わせくださいませ。
また、万が一、更なる精査や入院治療が必要な場合には、ご希望に沿って適切な医療機関をご紹介いたします。

監修:
菰池 信彦

専門分野:
内科・消化器内科・肝臓内科・便秘外来・内視鏡検査


資格:
医学博士(東京慈恵会医科大学)
日本内科学会 認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化管学会 指導医
日本肝臓学会 専門医
日本ヘリコバクターピロリ学会 感染症認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
厚生労働省緩和ケア研修修了