新型コロナウイルスワクチン接種と抗体・免疫獲得について

新型コロナウイルスワクチン接種は、高齢者接種だけでなく職域接種で若い方への接種も始まり2回目の接種を終えた方が日本全体で1割を超えました。抗体を作る免疫反応が起きるため接種後の副反応が出る方がいらっしゃいますが、ほとんどの方が数日で落ち着き、接種を終えて安心したという方の笑顔が励みになります。

ウィルスの抗体とワクチンの働きについて

抗体は、「既に感染した」方の血液中にみられる免疫物質であり、感染後から徐々に増加し、発症10-14日程度経過すれば、当面の間でほとんどの方の血液中に一定量以上みられます。

新型コロナウイルスワクチンは、メッセンジャーRNAを投与することで体内に新型コロナウイルス抗原の一部を作成させ、免疫反応が起こり抗体を自分で作るというものです。では接種すれば必ず抗体ができるのでしょうか?またどのくらいで抗体はできるのでしょうか?

厚労省の発表では、本ワクチンの接種で十分な免疫ができるのは、2回目の接種を受けてから7日程度経って以降とされています。

当院では検査機関のご協力の下、米国FDAからEUA(緊急使用許可)が出ている2社のうち、アメリカ・アボット社のIgG抗体定量検査を導入致しました。

先駆けて当院のスタッフでも検査をした結果をご紹介致します。

 

新型コロナウイルスワクチンで免疫獲得できるのか?

アボット社の基準値として4,160AU/mL以上であれば感染しにくくなる(有効な抗体力価)とされています。図のように1回目の接種だけでは十分な値が得られませんでしたが、2回目接種後に急激に抗体価が上がっていました。

この結果は1名のものですが、スタッフ21名のワクチン接種後2週間目の抗体価を調べたところ、ほぼ全員が十分量の抗体量を保持していました。ただ、4000に満たないスタッフもおり、少しでも抗体価があれば問題がないのか? 3回目接種が必要なのか?また、今後どのくらいで抗体価が減ってしまうのか?引き続き情報収集をしていく必要があります。

 

副作用が全くなかったら抗体が出来ていないということ?

ちなみに発熱、倦怠感などの副作用が強く出た事と抗体価の相関関係はみられませんでした。副反応がほとんどなかったという方でもきちんと抗体はついていますのでご安心下さい。

ただ抗体が検出されても、もう一度新型コロナウイルスに感染しないかどうかは、現時点ではまだ不明です。また、免疫機能は抗体価だけで判断されるものではなく、Tリンパ球も活性化するという別の免疫反応も起こることが知られていますので、日々進歩する研究結果に注目していきます。

一度感染された方、ワクチン接種を受けた方でも、感染される方の報告もあり、また人へ感染させてしまうリスクはあるため、引き続き感染対策を行わなくてはいけませんが、重症化を防ぐことは分かっており、ワクチン接種の普及が進むことを祈るばかりです。