子宮頸がんワクチン:9価ワクチンの公費助成が始まりました

子宮頸がんは、子宮の入口部分の粘膜にできるがんで、95%以上がヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因とされています。主な感染ルートは性交渉で、一生涯で約8割の女性がHPVに一度は感染されるといわれていますがほとんどは自分の免疫力で自然と消えるものです。ただ、一部の人でHPVが排除されずに感染状態が続くと数年から十数年かけてがん化してしまいます。

2019年には年間約11,000人の女性が子宮頸がんと診断され、2020年には2900人が亡くなりました。子宮頸がんは他の多くのがんと異なり、若い20~40代の働き盛りや妊娠適齢期の女性へ罹患率が高いのが特徴ですが、ワクチンで防ぐことができる唯一のがんです。

 

HPVワクチンは、原因ウイルスに似たタンパク質抗原を体内に注射することでウイルスに対する免疫をつくり、感染させないことでがんの予防をします。HPVの型は200種類以上あり、このうち15種類が子宮頸がんの原因になることが分かっています。2023年4月から9種類のHPVを対象とする9価ワクチンが全額公費の定期接種で使えるようになりました。従来は2価と4価のみでしたが対応できるHPVの遺伝子型が大きいほど幅広いHPVに効果があり、9価ワクチンは原因ウイルスの88%に対応しています。

 


 

9価

4価

2価

HPV型

6,11,16,18,31,33,45,52,58

6,11,16,18

16,18

効果

子宮頸がんの88%

尖圭コンジローマ

子宮頸がんの65%

尖圭コンジローマ

子宮頸がんの65%

 

HPVワクチンをめぐって、2013年に定期接種を開始した直後から体の痛みや慢性疲労の報告が相次ぎ、国は積極的推奨を中止したため70%あった接種率が1%と極端に低迷しました。その後、専門家会議で接種の有効性が副反応のリスクを上回ると認められ、2022年から接種の推奨を再開しました。小6~高1相当の女性が接種対象ですが、約9年間の接種低迷期に対象年齢だった1997年~2005年生まれの女性へのキャッチアップ2025年3月までとなっています。時期を逃してしまうと自費接種になってしまうので、早めの接種をお勧め致します。

感染予防の観点からも性交渉を経験する前のHPVワクチン接種が望ましく、免疫のつきやすさから16歳までの接種が推奨されており、15歳未満の方は2回接種、15歳以上の方は3回接種が必要です。海外では子宮頸がんは予防する概念が主流でありHPVワクチンは世界80か国以上で承認され50以上の国で定期接種となっています。オーストラリアでは接種率が8割以上で子宮がんの罹患率が減少しており、世界で一番最初に子宮頸がんを克服する国と言われています。

ただし子宮頚がんはワクチンで完全に防げるわけではなく、20歳以降は2年に1回の定期健診をお勧め致します。

副反応については、接種後に注射部位の痛み、腫れがありますが数日で消失することがほとんどです。接種時に迷走神経反射という反応で、冷や汗、血圧低下で失神してしまうことがありましたが、接種後安静にして様子を見ることで対応が可能です。重篤な副反応として運動障害や不随意運動等が恐れられていましたが、明らかな因果関係はないとされています。

 

HPVワクチンは男性のがん予防にも効果があり、肛門がんや尖圭コンジローマの原因にもなるため、60以上の国で男性を対象にHPVワクチンが定期接種となっています。日本では男性は定期接種の対象になっていませんが、9歳以上の男性は4価ワクチンが認可されています。ただ自費のため3回接種で5万円以上かかるため、日本でも自治体が公費助成の取り組みを始めています。